暖簾をくぐる来訪者のほぼ全員が注文するのが、屋号を冠した「ビーフン」と、名物中華ちまき「バーツァン(うずら・豚角煮入り中華風ちまき)」です。この二本柱には、家庭料理や一般的な中華料理店では決して真似のできない緻密な調理工程が隠されています。
ビーフンには大きく分けて「焼きビーフン」と「汁ビーフン」の2種類が存在し、具材も五目、蟹玉、牛肉など多彩な選択肢が用意されています。焼きビーフンは、極細の良質な米粉麺が豚肉や白菜、シイタケのエキスを含んだ自家製の上湯(シャンタン)スープを限界まで吸い込み、パラリとしながらもしっとりとした絶妙な口当たりに仕上がっています。卓上に備え付けられた特製の「にんにく醤油」を途中でひと回しすると、ニンニクの鮮烈な風味と醤油の香ばしさが加わり、鮮やかな味のグラデーションが生まれます。
一方の汁ビーフンは、驚くほど透き通った黄金色のスープが特徴です。鶏ガラと乾物の豊かな滋味が胃の腑に優しく染み渡り、新橋で連日夜の付き合いを重ねるビジネスパーソンの間では「二日酔いの特効薬」として絶大な信頼を集めています。
そして、もうひとつの主役である「バーツァン」は、竹の皮を解いた瞬間に立ち上る八角と竹の清々しい香りが食欲を直撃します。醤油ベースのタレでじっくり炊き込まれたもち米の中には、ホロホロに崩れる豚の角煮、ウズラの卵、大粒のピーナッツ、シイタケが惜しげもなく包み込まれており、三角形のずっしりとした重量感は圧巻です。ちまきのテイクアウト(持ち帰り)を求める常連客も後を絶たず、ランチを食べ終えた客が家族や同僚への手土産として2個、3個と包んでもらう光景は同店の日常風景となっています。