なぜあれほどの名優が、自ら銀幕を去る道を選んだのか。その根底には、2011年7月に巻き起こったいわゆる「フジテレビ騒動」が長く影を落としていました。当時、Twitter上で「正直、お世話になったことも多々あるけど8は今マジで見ない。韓国のTV局かと思う事もしばしば」「ここはどこの国なんだという感じ」と投じた投稿は、瞬く間にネット空間を二分する大炎上へと発展。フジテレビ本社前での大規模デモを誘発する引き金となりました。
この一件を契機に、所属していた大手事務所スターダストプロモーションを離脱。地上波ドラマの主要キャストから姿を消すことになります。芸名も「高岡蒼甫」から「高岡蒼佑」、そして「高岡奏輔」へと改名を重ねました。この改名理由について本人は、運気や画数のリセットだけでなく、「過去のしがらみや作られた虚像を捨て、真っ新な心で表現に向き合いたい」という強い意志の表れであったと関係者に明かしています。
その後も映画『止められるか、俺たちを』(2018年公開、大島渚役)などで凄みのある演技を披露し、関係者からも復帰を渇望されていましたが、2020年8月3日、自身の公式インスタグラムで突如として引退を発表します。その手記には、胸に刺さる率直な心情が吐露されていました。
「誇らしくもあり、誇れない道でもありました。山あり谷ありという言葉では到底足りないほどの人生」「自分の中で限界を感じ、これ以上俳優としての気力を保つことができなくなった」。巨大資本が動く芸能界のルールと、自分自身の純粋な表現欲求の乖離に疲れ果てた男が下した、魂の休戦宣言だったといえます。