この名曲が誕生した背景には、バンドの存亡を揺るがす壮絶なドラマがありました。1988年にメジャーデビューを果たしたエレファントカシマシの経歴を振り返ると、初期はストイックかつ攻撃的な音楽性で批評家から高く評価されたものの、商業的には苦戦を強いられます。そして1994年、当時の所属レコード会社から無情にも契約を打ち切られるという最大の危機に直面しました。
「自分たちの音楽をもっと多くの人に届けたい、何としても売れる曲を作らなければならない」――そんな強い覚悟を胸にポニーキャニオンへ移籍した宮本浩次は、それまでの作風を一変させ、徹底的にメロディとポップスに向き合います。『今宵の月のように』の誕生秘話において象徴的なのは、宮本が自宅の部屋にこもり、ドラマ制作陣からのシビアなリクエストに応えながら、何度もメロディを練り直して完成させたというエピソードです。崖っぷちに追い詰められた男の執念が、奇跡のメロディを呼び寄せました。