生殖医学の基本メカニズムに立ち返ると、月経とは「受精卵が着床しなかった結果、不要になった子宮内膜が剥がれ落ちて体外へ排出される現象」を指します。排卵後に形成される黄体から分泌されるプロゲステロン(黄体ホルモン)が減少し、妊娠が成立しなかった合図として内膜がリセットされるのが本来の月経です。つまり、受精卵が着床して妊娠が成立している状態であれば、子宮内膜を維持するホルモンが分泌され続けるため、定義上の「月経」が起こる余地はありません。
しかし、ここで決定的な盲点が生じます。子宮から血液が体外に排出される現象そのものを、多くの人は日常会話の中で「生理」と総称してしまいます。妊娠初期の母体では、受精卵が子宮内膜に潜り込む際の組織刺激、胎盤を形成する過程での血管破綻、ホルモンの急激なゆらぎなど、出血を誘発する因子が幾重にも重なっています。これらが「たまたま生理予定日の前後に発生する」ことで、本人は月経が来たと錯覚し、「生理が来たから妊娠していない」という誤った安心感や思い込みを生み出してしまうのです。