エンタメ作品に親しむ読者が陥りがちな誤解の一つに、「相手が泣いて謝罪すれば、有耶無耶になってしまうのではないか」という懸念がある。しかし、実務の世界においては真逆の現象が起きる。
第一の盲点は、涙による謝罪が「有責性の自認」として記録される点だ。対峙した現場でのやり取りをスマートフォンのボイスレコーダー等で録音されていた場合、「私が悪かった、許して」という泣き言は、不貞行為や不当な扱いを自ら認めた決定的な間接証拠となる。後から「強要された」「事実無根だ」と主張しても、録音データが存在する限り裁判所の判断を覆すのは極めて困難だ。
第二の誤解は、義実家を巻き込んだ修羅場の後処理である。配偶者が激怒した際、自らの非を隠して義実家に助けを求め、「夫にいじめられている」と偽りの同情を引こうとする事例が後を絶たない。しかし、サレ夫側がすでに義両親に対しても証拠資料一式を送付していた場合、頼みの綱であった実家からも絶縁され、社会的孤立を深める結果となる。
感情的な崩壊は、法的な防衛ラインを自ら放棄することに等しい。自制心を失い、その場しのぎの嘘を重ねるほど、慰謝料請求や財産分与における立場は悪化していく。