伝統的な和紙の作り方を支える中心素材が、日本特有の植物である「楮(こうぞ)」「三椏(みつまた)」「雁皮(がんぴ)」の三大原料です。
- 楮(こうぞ):繊維が最も太く長く(10〜20mm)、絡み合いが強固。障子紙、記録用紙、傘紙など幅広い伝統工芸品に使用される和紙の代表格。
- 三椏(みつまた):繊維が柔軟で光沢があり、きめ細かな仕上がりが特徴。耐摩耗性と印刷適性に優れ、日本銀行券(紙幣)の主要原料として知られる。
- 雁皮(がんぴ):繊維が細く極めて強靭で、半透明の光沢と防虫性を持つ。栽培が極めて困難で自生種に頼るため「紙の王」と呼ばれる高級素材(鳥の子紙など)。
そして、手漉き和紙の成否を分ける影の主役が、アオイ科の植物から抽出する粘液「ねり(トロロアオイの根)」です。水中に重い植物繊維を入れるとすぐに沈殿してダマになりますが、この「ねり」を加えることで水中に粘性が生まれ、繊維が均一に浮遊・分散します。
職人が「漉き舟(すきぶね)」の中で「桁(けた)」と「簀(す)」をリズミカルに揺り動かす際、「ねり」の粘度によって水が簀から抜ける速度が絶妙にコントロールされます。この流動の中で繊維が縦横無尽に絡み合い、薄くても破れない強靭な紙層が形成されるのです。