「階段を降りるときに膝の内側がズキッと痛むのに、半月板には異常がない」「フォームローラーで膝の周りをいくらほぐしても、走り出すと痛みがぶり返す」。大手Q&AサイトやSNS上では、膝内側の痛みに悩む市民ランナーや愛好家の切実な投稿が数多く確認できます。
都内のスポーツ整形外科で年間数百例の膝関節疾患を担当する主任理学療法士は、臨床現場のリアルについて次のように語ります。
「患者さんの多くは『膝の軟骨がすり減っているのではないか』と強い不安を抱えて来院されます。しかし、実際に徒手検査を行うと、膝関節内ではなく、脛骨粗面の内側から5cmほど下にある縫工筋腱の付着部に限局した明瞭な圧痛(チーネサイン)が見られます。超音波エコーで確認すると、鵞足包の肥厚と血流シグナルの増生が確認でき、縫工筋がピンと張ったギターの弦のように過緊張を起こしているケースが非常に多いのが実情です」
また、フルマラソン完走を目指す30代女性ランナーの手記には、次のような生々しい告白が綴られています。
「最初は月間走行距離を150kmから200kmに増やしたタイミングでした。最初は違和感程度だったのが、2週間後には歩行時の着地すら激痛に変わりました。安静にして痛みが引いたと思って走り出すと、3km地点で再び激痛が走る。原因が縫工筋の過緊張と扁平足による回内足(プロネーション)だと判明するまで、3ヶ月もの時間を無駄にしてしまいました」
現場の声が浮き彫りにしているのは、局所の湿布や安静だけでは根本解決に至らないという冷厳な事実です。縫工筋が悲鳴を上げている根本原因(骨盤の歪み、足部のアーチ低下、股関節の機能不全)に目を向けない限り、運動を再開した瞬間に再発を繰り返す構造的罠が存在します。