「作業療法士国家試験は難化しているのか?」という疑問に対し、養成校の教員や予備校講師の多くは「問題の質的変化による難易度の上昇」を指摘します。合格率の推移だけを眺めると、例年75%〜85%前後の水準を維持しており、一見すると医師国家試験(約90%)や看護師国家試験(約90%)に近い高水準に見えます。しかし、この数字には養成校による「卒業留年」や「受験見送り」という厳しい学内選考フィルターが介在している点を見落としてはなりません。
厚生労働省の試験施行データによると、2024年に適用開始となった「令和6年版理学療法士作業療法士国家試験出題基準」以降、単一の疾患知識を問う一問一答形式が大幅に削減されました。代わりに増えたのが、急性期から回復期、生活期(地域・在宅)への移行を見据えた「複合的な症例問題」です。現場の臨床実習で実際に直面するような多職種連携や精神障害・発達障害領域の意思決定支援に関する出題が目立ち、暗記型の学習に終始した受験生が大量に失点する構造が浮き彫りとなっています。
さらに、新卒受験者の合格率が85%〜90%で推移するのに対し、既卒(浪人)受験者の合格率は30%〜40%台まで急落するという厳しい格差が存在します。一度不合格のループに陥ると、モチベーションの維持や臨床現場を離れた状態での学習が極めて困難になる現実を如実に示しています。