なぜ熟練のトレーニーやアスリートほど「筋トレ前」の栄養補給に神経を尖らせるのでしょうか。その最大の理由は、血中アミノ酸濃度のピークをトレーニング時間帯にピタリと重ね合わせるためです。
プロテインパウダーを摂取しても、胃で分解され、小腸で吸収されて血中にアミノ酸として行き渡るまでには一定のタイムラグが生じます。一般的なホエイプロテインの場合、摂取してから血中アミノ酸濃度が上昇し始めるまでに約30分、ピークに達するまでにはおよそ60分から70分を要します。
つまり、トレーニング開始の60分前にホエイプロテインを摂取しておけば、バーベルを握り負荷をかけているまさにその最中に、筋肉の合成材料である必須アミノ酸(EAA)が血液中に満ち溢れている状態を作り出せます。ハードな運動刺激によって筋肉の合成スイッチ(mTOR経路)が入った瞬間から、タイムラグなしで筋修復の材料を送り届けることが可能になるわけです。
逆に最も避けるべきなのは、「空腹のまま筋トレに突入すること」です。昼食から5時間以上が経過して夕方にジムへ直行するようなシチュエーションでは、体内のグリコーゲンと血中アミノ酸濃度が底をついています。この状態で筋トレを行うと、アドレナリンやコルチゾールといった異化ホルモンが優位になり、筋肉を肥大させるどころか、自らの筋肉を削ってエネルギーを取り出す「筋破壊」が進行してしまいます。
なお、「筋トレ直前(15〜30分前)にプロテインを飲む」というやり方は消化不良を招くため推奨されません。胃に水分や未消化物が滞留した状態で腹圧をかけるスクワットやデッドリフトを行うと、消化器官への血流が阻害され、吐き気やパフォーマンス低下の引き金になります。直前に補給せざるを得ない場合は、消化工程を必要とせず15〜20分で吸収されるEAA(必須アミノ酸)サプリメントを選択するか、プロテインであれば少なくとも運動開始の45〜60分前には飲み終えるのが鉄則です。