まな板へ魚を乗せる前に、まず直視しなければならない物理的危険が存在します。コチのトゲ注意点と危険な理由を解剖学的に検証すると、警戒すべき箇所は背ビレだけに留まりません。最も警戒を要するのは、エラ蓋の左右後端に突き出た「主鰓蓋骨(しゅさいがいこつ)の棘」です。この骨はナイフの切っ先のように研ぎ澄まされており、暴れる魚体を押さえようとした手のひらや親指の付け根を深々と貫通する事故が頻発しています。
また、第一背ビレの硬棘(こうきょく)および尻ビレの前端部も非常に硬く鋭利です。コチ自体にハオコゼのような致死性タンパク毒腺は確認されていませんが、粘液中に常在する海洋性ビブリオ属などの雑菌が創傷深部に押し込まれることで、創傷感染や激しい化膿、蜂窩織炎(ほうかしきえん)を引き起こす危険性を秘めています。手元が狂った一瞬の油断が、数日間に及ぶ手の腫れや激痛につながる現実は見過ごせません。
安全を確立するための決定的な手順は、出刃包丁を握る前に頑丈な調理用キッチンバサミでトゲを全て物理的に切除することに尽きます。具体的な安全プロトコルは以下の通りです。
まず、厚手の耐切創手袋や清潔な厚手のタオルで魚体を尾側からしっかりとホールドします。次に、左右のエラ蓋先端にある鋭利なトゲの根元へハサミを入れ、パチンと切り落とします。続けて、背ビレを尾側から頭側へ向かって指先で逆立てるように起こし、露出した硬い背ビレの棘条を根元から完全に刈り取ります。同様に腹側の尻ビレのトゲも切断してください。この「事前武装解除」を完璧に行うだけで、その後のマゴチのさばき方における負傷リスクを9割以上削減できます。