脳梗塞はある日突然起きる病気と捉えられがちですが、実際には本格的な発症の直前、あるいは発症直後に明瞭なシグナルを発しています。国際的に救急現場や専門医が推奨し、一般家庭でもわずか1分で実施できるスクリーニングテストが「FAST(ファスト)の法則」です。自分自身、あるいは目の前の家族に異変を感じた際は、次の3つのテストを直ちに行ってください。
【F:Face(顔の麻痺テスト)】
「イー」と声を出して歯を見せるように笑ってみてください。顔の片側だけ口角が上がらず垂れ下がっていたり、ほうれい線の深さに左右差が生じていたり、口の端から涎(よだれ)がこぼれる場合は顔面神経麻痺の明確な兆候です。
【A:Arm(腕の脱力テスト)】
両腕を前方に真っ直ぐ肩の高さまで伸ばし、手のひらを上に向けた状態で目を閉じ、10秒間キープします。片側の腕に力が入らず徐々に落ちてくる、あるいは手のひらが内側にクルリと回転してしまう(バレー徴候)場合、大脳の運動野から指令が遮断されている危険性を示します。
【S:Speech(言葉・ろれつのテスト)】
「ラリルレロ」「パパパ」「東京特許許可局」といった短いフレーズを声に出して発声させます。ろれつが回らない原因は舌や口唇を動かす筋肉の麻痺であり、言葉がもつれる、言いたい単語が思い出せない(失語)、相手の言っている意味が理解できないといった症状も、言語中枢への血流低下が招く危険信号です。
【T:Time(発症時刻の確認と通報)】
上記の「F・A・S」のうち、たった1つでも異常が確認された段階で検査は陽性です。その場で直ちに発症時刻(または最後に元気だった時刻)を記録し、迷わず救急車(119番)を手配してください。
このFASTテストに加え、日常で現れる脳梗塞の初期症状チェックとして警戒すべき項目には以下のようなものがあります。手足の片側だけに生じるしびれや脱力感、片方の目だけ急に見えなくなる一過性黒内障、視野の半分が欠ける半盲、さらには立っていられないほどの急激な回転性めまいや足のふらつきです。両手両足が同時にしびれる場合は頚椎症や末梢神経障害の可能性もありますが、「身体の右半分だけ」「左手と左足だけ」という左右非対称の異常は、脳の血管事故を疑う最大の決め手となります。