激やせの話題性やメディア露出が先行しがちだった市川九團次ですが、歌舞伎ファンや演劇評論家からの本質的な評価はどのようなものなのでしょうか。SNS上の生の声や劇評を精査すると、その評価は極めて硬派で実力本位なものであることが浮き彫りになります。
客席から寄せられる評判の中で最も際立っているのは、以下の3点です。
1. 上方仕込みの繊細な心理描写と台詞術
五代目坂東竹三郎のもとでみっちりと仕込まれた関西歌舞伎の素養は、現在の江戸歌舞伎・成田屋の舞台において唯一無二のスパイスとなっています。単なる荒々しい荒事(あらごと)に終わらず、登場人物の腹の底にある哀哀たる情念や屈折した悪の心理を、粘りのある台詞回しで描き出します。
2. 團十郎との阿吽(あうん)の呼吸
長年、團十郎の最も近くで舞台を共にしてきた経験から、座頭である團十郎の細かな呼吸や間合いを完全に把握しています。主役を引き立てながら、自らの見せ場では確実に客席を惹きつける引き算と足し算の演技は、「成田屋の舞台を最も引き締める名脇役」として絶賛されています。
3. 敵役(かたきやく)や実悪(じつあく)における圧倒的なスケール感
減量によって研ぎ澄まされた肉体と鋭い眼光は、凄みのある敵役に絶大な説得力を与えています。『勧進帳』の富樫の家臣や、古典狂言における凄腕の刺客などを演じる際、舞台上に現れるだけで場の空気が一変するほどの緊張感を生み出しています。
ネット上の観劇レビューでも、「九團次が出ているだけで幕内の芝居の密度が一段上がる」「血筋の役者には出せない、泥水をすすってきた男にしか出せない芸の凄みがある」といった熱量の高い感想が多く見受けられます。話題性だけで終わらない確かな実力こそが、彼が第一線で重宝され続ける最大の論拠です。