ネット上のコミュニティやSNSを観察すると、「月10万円貯金なんて絶対に無理だ」「そんな生活は仙人か引きこもりしかできない」という怒りや絶望に近い書き込みが目立ちます。なぜこれほどまでに「無理」と断定されてしまうのでしょうか。現場の生の声と家計相談の現場から見えてくるのは、典型的な3つの構造的トラップです。
第1のトラップは、「手取り収入と目標設定の致命的なミスマッチ」です。手取り20万円の一人暮らしが月10万円を貯金しようとすれば、貯蓄率は50%に達します。残り10万円で家賃、光熱費、食費、通信費のすべてを賄わなければならず、都心部であれば家賃だけで予算の大半が消し飛びます。これは家計管理の巧拙以前に、算術的に破綻している計画です。自身の収入規模に見合わない過大な目標を掲げてしまい、数ヶ月でガス欠を起こして「自分には無理だった」と投げ出すパターンが後を絶ちません。
第2のトラップは、「気合いと根性に依存した変動費の過度な削減」です。多くの人が貯蓄を志した際、最初に手を付けるのが「もやし生活」に代表される極端な食費の削り込みや、友人との付き合いの全拒否です。しかし、人間の意志力には限界があります。数ヶ月間我慢を続けた結果、蓄積したストレスが爆発し、突発的なネットショッピングや高額な外食への「リバウンド消費」を引き起こして貯金を吐き出してしまうのです。
第3のトラップは、「使途不明金による家計のブラックボックス化」です。「給料日前になると、なぜか口座にお金が残っていない」と語る人の支出を精査すると、コンビニでの1日数百円の買い物、利用実態のない月額制の動画・音楽サブスクリプション、無意識に引き落とされる手数料など、本人の記憶に残らない数千円単位の支出が毎月3万〜5万円ほど積み上がっています。水道管に無数の小さな穴が空いている状態のまま給水を増やそうとしても、水が溜まるはずがありません。