フィルパワー(Fill Power、略称:FP)とは、羽毛(ダウン)が持つ「かさ高さ(体積の大きさ)」と「復元力」を数値化した国際基準です。どれだけ空気をたっぷり抱え込めるかを示す指標であり、数値が高いほど少量の羽毛で大きく膨らむ性質を持っています。
羽毛そのものが発熱するわけではありません。羽毛が大きく膨らんでたくさんのデッドエア(動かない空気の層)を抱え込み、それが着用者の体温によって温められることで熱を外に逃がさない断熱壁を作ります。つまり、大きく膨らむ羽毛ほど優秀な断熱材として機能するわけです。
その測定方法は国際規格で厳密に定められています。専用の透明なシリンダーの中に1オンス(約28.4g)の羽毛を入れ、上から一定重量の円盤状ピストン(荷重)を乗せます。重りを乗せた状態で羽毛が押し返して支えられた体積が「何立方インチ(cubic inches)」あるかを計測します。たとえば、1オンスのダウンが700立方インチまで膨らんだ場合、そのダウンの性能は「700フィルパワー」と表記されます。
フィルパワーが高い理由の根底にあるのは、原毛となる水鳥の生育環境と個体の成熟度です。寒暖差が激しい寒冷地(ポーランドやハンガリーなど)で長期飼育された親鳥(マザーグース)から採取されるダウンボールは、中心の核が小さく、放射状に広がる羽枝が極めて細かく発達しています。この大粒で弾力性に富んだダウンボールこそが、驚異的な復元力を生み出す源泉です。