「クループ」という病名は、スコットランド方言で「しゃがれ声で叫ぶ」を意味する言葉に由来しています。耳にした親が誰しも戦慄を覚える特異な音は、医学界では「吠えるような咳(バーキング・コフ:barking cough)」と定義され、一般にはオットセイや犬の鳴き声に似た咳、あるいは金属を叩くような「クループ症候群 ケンケンする咳」と形容されます。
このような極めて特異な音が発生する理由は、声帯のすぐ下に位置する「声門下部」と呼ばれる気道の解剖学的構造にあります。乳幼児の気道は成人に比べて極めて細く、内径はわずか数ミリしかありません。パラインフルエンザウイルスやRSウイルスなどの感染によってこの声門下部の粘膜に急激な炎症と浮腫(むくみ)が生じると、空気の通り道が極端に狭くなります。
狭小化した管を無理に空気が通過する際、物理学における「ベルヌーイの定理」が示す通り、流速が急上昇して周囲の組織を激しく振動させます。これが、通常のゴホゴホという湿性咳嗽とは根本的に異なる、硬く響く金属的な咳の正体です。同時に、声帯そのものの振動も妨げられるため、クループ症候群 嗄声(声がれ)が合併し、声が出しにくくなったり、かすれ声になったりします。