特定機能病院や大学病院に入院した際、「私の手術は、いったい誰が切ってくれるのか?」という疑問を抱く患者は少なくありません。外来で著名な教授の診察を受けたとしても、その教授が直接メスを握るとは限らないのが大病院の実情です。
では、大学病院で執刀医は誰が決めるかというと、原則として個々の医師の単独判断ではなく、医局や診療科全体で行われる「術前カンファレンス(症例検討会)」の合議によって決定されます。この会議には診療部長、教授、准教授、講師、助教、医員らが勢揃いし、患者の画像データや全身状態、既往歴を徹底的に検証します。
その選定基準は、大きく以下の3つの要素から構成されています。
第一に「手術難易度と医師の修練度」です。病変の広がりや血管の走行が極めて特殊な高難度手術であれば、その術式の経験が豊富な指導医クラスや准教授クラスが執刀医に指名されます。第二に「教育機関としての側面」です。大学病院は未来の外科医療を担う若手医師を育成する義務を負っているため、比較的定型化された難易度の術式では、学会専門医を取得する前後の若手・中堅医師が執刀医として選ばれることがあります。
ここで患者側が最も不安視するのが「若手の練習台にされるのではないか」という疑念です。しかし実際の医療現場では、経験の浅い医師が単独でメスを握ることは厳しく禁止されています。若手が執刀医を務める場合、必ずその術式を熟知した「指導医(プロクター)」が第一助手(前立ち)として密着し、ミリ単位で指示・介入を行いながら安全性と手技の質を二重に担保するシステムが確立されています。