直会の席で最も緊張するのが、施主や代表者としての「挨拶」と「乾杯の発声」である。神事の直会には、一般の宴席とは異なる特有の言い回しや忌み言葉の配慮が求められる。ここでは現場ですぐに使える実践例文を紹介する。
乾杯の作法:神事における発声のルール
一般的な飲み会では「乾杯!」と高らかに唱和するが、格式ある神事の直会では「弥栄(いやさか)」という発声を用いる場合がある。「弥栄」とは、ますます繁栄することを祈る神道由来のめでたい言葉だ。司会者や神職から「弥栄の発声で」と指定された場合は、杯を掲げて「弥栄」と唱和する。指定がない地鎮祭などでは、通常の「乾杯」で差し支えない。
ただし、神葬祭(葬儀)の直会では決して「乾杯」や「弥栄」と言ってはならない。この場合は声を張り上げず、落ち着いたトーンで静かに「献杯(けんぱい)」と発声し、杯を打ち合わせる音を立てずに静かにいただくのが厳格なマナーである。
【文例1】地鎮祭の直会における施主の開会挨拶(会食を行う場合)
「本日はお忙しい中、また天候にも恵まれる中(※当日の天気に合わせる)、弊社の新社屋建設(※個人の場合は『私どもの自宅新築』)にあたり、厳かな地鎮祭を執り行っていただき誠にありがとうございました。おかげさまで滞りなく神事を納めることができ、土地の神様に工事の無事と将来の繁栄をお祈り申し上げることができました。神様へのお供え物をお下げし、ささやかではございますが直会の席をご用意いたしました。工事に携わっていただく皆様の安全を心より祈念いたしまして、乾杯の音頭を取らせていただきます。どうぞ皆様、グラスをお持ちください。――乾杯!」
【文例2】地鎮祭で会食を行わず、折詰弁当を渡して解散する場合の挨拶
「皆様、本日は誠にありがとうございました。おかげさまをもちまして、無事に地鎮祭を納めることが叶いました。神職様には心温まるご奉仕をいただき、厚く御礼申し上げます。本来であれば皆様とご一緒に直会の膳を囲むべきところではございますが、本日は現場作業や皆様のお帰りの安全を考慮いたしまして、お持ち帰りの折詰とお印ばかりの品をご用意させていただきました。どうかご自宅にてご賞味いただければ幸いに存じます。これから着工となりますが、何よりも現場の無事故・無災害を第一に、素晴らしい建物の完成を心より願っております。本日は誠にありがとうございました。」