インターネット上で流布している手作りレシピの中には、科学的観点から見ると風味や安全性を損ねる不正確な情報が散見されます。代表的な3つの誤解を正しく認識しておく必要があります。
1つ目の誤解は、「香りを引き出すために熱湯で一気に溶かす・煮出す」という手法です。ゆずの爽快なアロマの主成分であるモノテルペン類(リモネン、ミルセンなど)は非常に揮発性が高く、80度以上の熱が加わると瞬時に大気中へ飛散してしまいます。さらに熱に弱い水溶性ビタミンCの熱分解も引き起こします。ホットで楽しむ場合でも、一度人肌程度に冷ましたお湯や、沸騰後に少し置いた60〜65度前後のお湯で割るのが、香りと栄養価を最大限に引き出すプロの鉄則です。
2つ目の誤解は、「強い酸性だから常温で何ヶ月も放置して良い」という過信です。レモンやゆずはpH2〜3という強酸性を示すため、雑菌に対する一定の静菌作用はあります。しかし、空気中に遍在する好酸性のカビや耐酸性酵母は、糖分が存在する環境下であれば平然と増殖します。冷暗所と呼ばれる場所であっても、暖房の効いた現代の住宅では室温が20度を超えることが多いため、仕込み初期の砂糖を溶かす期間を除き、基本保管場所は必ず冷蔵庫(10度以下)を選択しなければなりません。
3つ目の重大な盲点は、「アルミ製やスチール製の保存容器・フタの使用」です。ゆず果汁に含まれる高濃度のクエン酸は金属を侵食する性質を持っています。酸によって容器の内壁から微量の金属イオンが溶出すると、ジュースに金気臭(金属味)が移るだけでなく、消化器官に負担をかける要因になり得ます。保存には必ず耐熱ガラス瓶、または酸に耐性のある陶磁器や高密度ポリエチレン製の容器を使用し、ビンの金属フタの内側にパッキンやラップを噛ませて直接果汁が触れないよう保護する配慮が求められます。