底面の印字が経年劣化で消えてしまっている場合や、作家ものの和食器のように最初からマークがない場合、素材そのものの物理特性からリスクを見極めるリテラシーが求められます。特に台所で混同されやすいのが、陶器と磁器の耐熱の見分け方です。
陶器は陶土(粘土)を主原料として800〜1250℃前後の比較的低い温度で焼き上げられるため、内部に無数の微小な気孔が存在し、吸水率が3〜10%前後と高い特徴を持ちます。洗った際の水分が内部に残留した状態で電子レンジにかけると、気孔内の水分が急激に沸騰・気化膨張し、内圧によって皿が真っ二つに割れるリスクを孕んでいます。これに対し、耐熱陶器の特徴として挙げられるのは、リチウム鉱石(ペタライト)を配合している点です。熱膨張率が極めて低いペタライトを混ぜ込むことで、熱による膨張と収縮をゼロ近くまで抑え込み、直火やオーブンの過酷な熱衝撃にも耐えうるタフさを獲得しています。
一方の磁器は、陶石の微粉末を原料に1300〜1400℃の高温で焼き締められたガラス質の緻密な焼き物です。吸水率はほぼ0%に近く、一般的な電子レンジ加熱であれば水分膨張による破損リスクは陶器より大幅に低くなります。しかし、急激な温度変化(ヒートショック)に対する許容度は決して高くありません。
ガラス食器の分野では、耐熱ガラスの見分け方とパイレックス(Pyrex)に代表されるほうけい酸ガラスの存在が際立ちます。一般の安価なコップや平皿に使われる「ソーダライムガラス」は熱膨張が大きく、熱湯を注ぐだけでクラックが入ります。これに対して耐熱ガラスは、熱膨張係数が低いホウケイ酸ガラスを採用しており、製品には必ず「耐熱ガラス用」「耐熱温度差120℃以上」といったJIS S 2030に基づく法定品質表示が付記されています。外見上の識別ポイントとしては、ソーダライムガラスが断面に独特の青緑色を帯びるのに対し、高品質な耐熱ガラスは不純物が少なく無色透明に近い澄んだ質感を持っています。