料理やお菓子作りの成否は、グルテンのコントロールにかかっています。製菓や製パンの現場において、粉の選定は単なる好みではなく、物理現象に基づいた必然の選択です。
お菓子作りに薄力粉を使う理由
シフォンケーキやスポンジケーキ、サブレなどの焼き菓子において、目指すべき食感は「軽さ」「口どけの良さ」「ホロホロとした崩れやすさ」です。もしここへタンパク質量の多い粉を使ってしまうと、混ぜ合わせる過程で強いグルテン網が形成され、生地が重くゴムのような弾力を持ってしまいます。気泡の膜が硬化して口当たりが悪くなり、焼き縮みの原因にもなります。グルテン形成を最小限に抑え、デンプンのソフトな熱凝固を利用するために、タンパク質量が最も少ない薄力粉が選ばれます。
パン作りに強力粉を使う理由
一方、パン作りでは正反対の現象が求められます。イースト菌が発酵する際に発生する「炭酸ガス(二酸化炭素)」をしっかり包み込み、オーブンの中で風船のように生地を押し広げるためには、強靭で柔軟なグルテンの膜が欠かせません。薄力粉だけでパンを焼こうとすると、ガスを保持できずに途中で気泡が破裂し、高さの出ないずっしりと密度の詰まった焼き上がりになってしまいます。
家庭用デファクトスタンダード「日清フラワー小麦粉の特徴」
日本の家庭で最も親しまれている薄力粉の代表格が「日清フラワー」です。この製品はタンパク質量が約8%前後に精密にブレンド調整されており、揚げ物の衣にしても油切れが良く、クッキーを焼いても軽やかに仕上がる「極めてバランスの良い万能設計」が施されています。多くのレシピ作成者が日清フラワーの物性を標準として水分比率を割り出しているため、日本の家庭料理の味の基準点となっていると言っても過言ではありません。