『世田谷ラブストーリー』の最大の魅力は、聴き手の脳裏に映画のワンシーンのように浮かび上がる緻密な舞台設定にあります。歌詞の随所に散りばめられたランドマークや空気感から、その舞台が東京都世田谷区・下北沢周辺であることはファンの間でも広く知られています。
居酒屋がひしめく雑多な路地を抜け、小田急線や井の頭線の駅へ向かう帰り道。街灯が落とす影、肌寒い夜風、居酒屋の喧騒から少し離れた住宅街の静寂――。楽曲全体を包み込む湿り気を帯びた空気は、世田谷特有の「都会でありながらどこか生活感と哀愁が漂う街並み」だからこそ成立する情景です。
主人公は駅までの短い距離をできる限り引き延ばそうと、あえて遠回りを選び、歩調を緩めます。下北沢から世田谷の住宅街へと続く坂道や路地裏は、まさに二人の縮まらない距離感と、刻一刻と迫る別れのタイムリミットを象徴する重要な伏線として機能しています。