本書が明かした数々の提言のなかでも、特に大きな反響を呼んだのが「食事」と「薬」に対する大胆なアプローチです。多くのシニアが日頃から強いられている我慢に対し、医学的見地から明確な処方箋を提示しています。
まず食事においては、「好きなものを自由に食べる」ことが推奨されます。コレステロール値を恐れて肉類を敬遠する人が少なくありませんが、肉に含まれるタンパク質や脂質は、血管を丈夫に保ち、意欲や幸福感をもたらす脳内物質「セロトニン」の原料になります。疫学データを見ても、80代においては少し小太り(BMI 23〜25前後)の体型を維持している人のほうが死亡リスクが低く、感染症にも強いことが示されています。
次に薬の見直しです。血圧、血糖値、コレステロール、胃薬、睡眠薬など、多種類の薬を常用する「ポリファーマシー(多剤併用)」は、高齢者にとって重大なリスクとなります。薬の効きすぎによるふらつきや立ちくらみは、寝たきりの直接的原因となる転倒・骨折を誘発します。数値を下げるためだけに複数の薬を飲み、だるさや意欲低下に悩まされているのであれば、主治医と相談して本当に必要な薬だけに絞り込む勇気を持つことが、生活の質を劇的に引き上げる鍵となります。