物語の核をなすのは、主人公アタナシア・デイ・エルジェア・オベリアと、その父であり皇帝であるクロード・デイ・エルジェア・オベリアの絆だ。冷徹非道な君主として恐れられたクロードが、幼い娘の無邪気な笑顔と必死の生き残り策によって、次第に心を溶かされていくプロセスの描き方は秀逸である。
しかし、原作小説の結末へ向けて張り巡らされた伏線は、決して甘い親子の触れ合いだけではない。クロードの記憶喪失や黒魔法の侵食、さらには前世の記憶と「小説の物語」のギャップなど、緻密に配置された謎が後半一気に回収されていく。アタナシアが選択する「自らの足で立つ未来」と、父親の過酷な運命の交差点。そこには読者の涙を誘う感動的なフィナーレが待っている。