無敵の快進撃を続ける印象の強い山の民ですが、秦国の覇業を支える裏には、常に夥しい血と犠牲が伴っています。特に趙国西部・橑陽の戦いでは、かつてない悲劇に見舞われました。
カタリの戦死と妹キタリの慟哭
読者に最も深い悲しみを与えたのが、メラ族の若き族長カタリの壮絶な死です。橑陽の戦いにおいて、狡猾な犬戎将軍ブネンの罠に嵌まり、味方を盾にされた隙を突かれて胸を刺し貫かれ命を落としました。誰からも慕われた理知的な若きリーダーの喪失は、妹キタリの精神的成長と部族全体の復讐心に火をつける重大な転換点となりました。
また、犬戎族や趙の将軍・舜水樹による包囲網の中で、楊端和の親衛隊や名もなき山界の兵士たちが自らの命を投げ打って主君を守り抜く姿は、本作屈指の涙腺崩壊シーンとして語り継がれています。彼らの犠牲があったからこそ、橑陽城の奪取と鄴陥落という大偉業が結実しました。