武蔵小杉という街が歩んできた激動の歴史は、そのままこの街のスープの深みに重なる。かつての工業地帯から日本有数のタワマン街へと急速な変貌を遂げる中で、真っ先に変化を捉えたのは食のトレンドセッターたちだった。新旧の住民が混ざり合うこの独特の人口構造が、多様な味覚を受け入れる懐の深さを生み出している。
数年前まで「都心への通過点」に過ぎなかった駅周辺には、今や著名な賞を総なめにした名店の分店や、完全独立を果たした若い店主たちの個性が百花繚乱のごとく咲き誇る。高額なテナント料というハードルを乗り越え、この地で挑む価値があると判断した志の高い料理人たちが、日夜切磋琢磨を繰り広げているのだ。