乃木坂46のディスコグラフィにおいて、夏曲は『ガールズルール』や『裸足でSummer』など開放感あふれるアッパーチューンが王道とされてきました。しかし、18thシングル『逃げ水』の収録曲として世に放たれた『ひと夏の長さより』が提示したアプローチは、それらとは一線を画すものでした。
最大の要因は、乃木坂46の黄金期を支えた作曲家・杉山勝彦氏による緻密なメロディメイクにあります。『君の名は希望』『サヨナラの意味』『きっかけ』といったグループを象徴する名曲群を手掛けてきた同氏特有の、美しくもどこか哀愁を帯びた旋律が、アコースティックギターのストロークと軽快なストリングスに乗って疾走します。耳馴染みの良いポップスでありながら、サビに向かって感情が溢れ出すようなメロディラインは、聴き手のノスタルジーを強烈に刺激します。
当時、音楽メディアのインタビューや制作関係者の証言でも「表題曲になってもおかしくない完成度」と絶賛された本作。アイドルポップスの枠を超え、J-POPとしての普遍的なエモーションを獲得したことこそが、本作が「神曲」と称賛され続ける根本的な理由です。