歴史的な名言の初出となったのは、1995年10月4日に放映されたテレビシリーズ第1話「使徒、襲来」のクライマックスです。第3使徒サキエルが第3新東京市を蹂躙する非常事態の中、特務機関NERV(ネルフ)本部へ呼び出された14歳の少年・碇シンジは、3年間絶縁状態だった実父・碇ゲンドウから、突如として巨大人型決戦兵器「エヴァンゲリオン初号機」への搭乗を命じられます。
「乗るなら早くしろ。でなければ帰れ」という父の冷酷な通告に対し、シンジは「無理だよ、そんなの! 乗れるわけないよ!」と激しく拒絶しました。しかし、代役として担架で運ばれてきた血まみれの少女・綾波レイの痛々しい姿を目の当たりにした瞬間、逃げ場を完全に塞がれます。自責の念と恐怖の板挟みになったシンジは、拳を握りしめ、震える声で自らに言い聞かせるように呟き始めました。
「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ……逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ!――やります、僕が乗ります!」
本編で繰り返された回数は実に連続9回。この初号機搭乗前の葛藤シーンは、従来のアニメヒーローが掲げた「正義感」や「使命感」とは対極に位置する描写でした。心理学的に分析すれば、これは死の恐怖から逃れたい本能と、父に見捨てられる恐怖および他者への加害者意識との間で生じた「重度のダブルバインド(二重拘束)」状態です。シンジにとって「乗る」という決断は積極的な選択ではなく、自己の精神をすり潰しながら選んだ消極的防衛策に過ぎませんでした。