結論から明かすと、日本および西洋の花言葉体系において、マーガレットに「裏切り」「死」「絶望」といった直接的な怖い意味は存在しません。国内外の植物辞典や園芸協会の公式資料を網羅的に照合しても、登録されている言葉のほとんどは純愛や誠実さを称えるポジティブなものばかりです。
それにもかかわらず、なぜ検索エンジンで「怖い」「不吉」というサジェストワードが浮上するのでしょうか。その背景には、3つの明確な文化的要因が絡み合っています。
第1の要因は、世界中で親しまれている花びらによる恋占い(Effeuiller la marguerite)です。「好き、嫌い、好き……」と1枚ずつ花びらをちぎっていく儀式において、最後に「嫌い」を引いてしまうことへの心理的恐怖や失恋の不安が、花そのもののイメージへ投影されたと考えられます。
第2の要因は、シェイクスピア劇などの西洋古典文学における混同です。戯曲『ハムレット』のヒロインであるオフィーリアが小川で狂死する直前、キク科の花々を摘むシーンが有名ですが、ここで扱われるデージー(ヒナギク)やルータ(ヘンルーダ)の持つ「悔恨」「悲恋」のイメージが、外見の似ているマーガレットと混同されて語り継がれてしまった経緯があります。
第3の要因は、ギリシャ神話に登場する悲劇的な逸話との連想です。マーガレットが捧げられた女神アルテミスにまつわる峻厳な処女性や、破滅的な結末を迎える神話のエピソードが、現代のネット上で誇張されて解釈されたことが誤解に拍車をかけました。