放送から年月が経過してもなお、『アンナチュラル』の脚本が「日本ドラマの教科書」と称賛されるのには明確な根拠があります。第一に挙げられるのは、1話45分〜54分の枠内で物語が二転三転する「圧倒的な情報密度と構成の妙」です。一般的なミステリーに見られる「犯人当て」にとどまらず、死因究明のプロセスそのものが社会悪や構造的弱者の叫びをあぶり出す構図となっており、無駄なシーンが1秒たりとも存在しません。
第二の理由は、「法医学=死者の学問」という陰鬱なイメージを逆転させ「今を生きる人間のための物語」へと昇華させた点にあります。主人公・三澄ミコトをはじめとするUDIラボの面々は、凄惨な死体を解剖しながらも日常的に天丼を貪り、軽妙な雑談を交わします。悲劇に呑まれず「生」を営み続ける等身大のキャラクター造形が、重厚なテーマに心地よい風通しの良さを与えています。
第三に、脚本家・野木亜紀子と制作陣が数ヶ月にわたって重ねた泥臭いまでのフィールドワークです。監修を務めた法医学者たちへの取材を元に、PCR検査の手法、毒物反応、解剖所見の微細なニュアンスまで徹底的にファクトを担保しました。その結果、第96回ザテレビジョンドラマアカデミー賞最優秀作品賞・脚本賞、第7回市川森一脚本賞、コンフィデンスアワード・ドラマ賞など名だたる脚本賞の受賞歴を誇ることとなりました。