相撲界は徹底した実力主義・階級社会であり、それは締め込みの素材だけでなく、さがり一本の質感にまで冷徹なまでに反映されています。十両以上の「関取」と、幕下以下の力士では身につけるさがりの仕様が根本から異なります。
関取と幕下のさがりの違いは、見た瞬間に分かります。関取のさがりは一本一本が板のようにピンと伸びており、歩くたびにカチカチと規則正しく揺れます。これに対し、幕下以下のさがりは紐がふにゃふにゃと頼りなく波打っています。
相撲の廻しの下がりを作る方法には職人技が求められます。絹糸を均等に撚り合わせ、ふのりで固める理由は、海藻由来の「布海苔」が適度な硬さと美しい光沢を生み出し、汗に濡れても型崩れしにくいためです。熱湯で煮溶かした布海苔を刷毛で塗り込み、木型に張って天日干しにする工程を何度も繰り返して完成させます。
また、廻しの下がりの本数の理由には日本古来の吉凶思想が反映されています。奇数は「陽」の数字であり、2で割り切れないことから「割れない=土がつかない(敗れない)」という勝負師の奇数の縁起担ぎが込められています。力士の体格に合わせて17本、19本、大柄な力士であれば21本と奇数で仕立てられるのが鉄則です。