平均寿命の長さに目を奪われていると、重大な落とし穴を見落とすことになります。人生において本当に価値があるのは、病床でチューブにつながれて過ごす時間ではなく、自立して元気に活動できる「健康寿命」の長さです。
厚生労働省の公表データによると、男性の健康寿命は72.68歳。つまり、平均寿命(81.09歳)から健康寿命を差し引いた8.41年間は、何らかの介護や介助、自立困難な身体的制限を抱えて生きる期間であることを意味しています。定年退職を迎えてからわずか数年で体の自由が利かなくなり、配偶者や子、介護サービスに全面依存せざるを得ない男性が膨大な数に上っています。
ここで着目すべきは、「男性65歳平均余命」の数値です。現在65歳の日本人男性は、平均してあと19.60年生きられます。つまり、定年まで無事に生き延びた男性の実質的な平均到達年齢は約84.6歳に達します。「平均寿命が81歳だから自分も80歳前後で死ぬ」と考えるのは確率統計上の誤認であり、現実は80代半ばまで生きる人が半数を占めます。問題は、その後半期に8年を超える介護生活が待ち構えているという点です。