読者の心を最も抉るのが、恋雪の理不尽すぎる死因です。病気を克服し、狛治との祝言を控えた幸せの絶頂期に、彼女の命はあまりにも残酷な形で奪われました。
慶蔵の素流道場に隣接していた剣術道場は、以前から素流道場の土地を狙い、慶蔵に試合を挑んでは叩きのめされていました。門下生の腕でも人格でも素流道場に遠く及ばない剣術道場の跡取り息子は、真剣勝負で狛治に完敗した屈辱と劣等感を募らせ、卑劣極まりない凶行に及びます。
狛治が亡き実父へ結婚の報告をするため墓参りへ出かけ、道場を留守にしたわずかな隙を突き、隣接道場の者が素流道場の井戸へ毒を混入させたのです。何も知らずにその井戸水を飲んだ恋雪と慶蔵は、激しい苦痛の末に毒殺されました。狛治が戻った時、目にしたのは変わり果てた恋雪の遺体でした。守るべき人を二度までも理不尽に奪われた狛治の精神は完全に崩壊し、これが鬼・猗窩座へと堕ちていく直接の引き金となったのです。