これほどまでに消費者の支持を集め、再販要望が殺到しているにもかかわらず、なぜモスバーガーは全国の通常店舗でアボカドバーガーを定番メニューに据えないのでしょうか。ここには、フードビジネスにおける極めてシビアな「原材料の管理特性」と「店舗オペレーションの限界」が存在します。
第一の壁は、アボカドの追熟管理の難しさです。アボカドは収穫後も呼吸を続けるクライマクテリック型の果実であり、固すぎれば青臭く食感を損ね、熟しすぎれば黒ずみや異臭が発生します。全国1,000店舗以上を展開するチェーンにおいて、各店舗のアルバイトスタッフが毎日均一な「食べ頃」を見極めてカット・提供することは、オペレーション上きわめて難易度が高い作業です。
第二の壁は、酸化による変色スピードと廃棄ロスリスクです。アボカドは空気に触れるとポリフェノールオキシダーゼという酵素の働きにより、短時間で褐色に変化します。作り置きが一切効かず、注文が入ってから素早く調理する必要があるため、ピーク時の厨房負荷と廃棄ロス率が跳ね上がります。
第三の壁は、国際的な原材料価格と為替のボラティリティです。日本国内で流通するアボカドの9割以上はメキシコやペルー等からの輸入に依存しています。世界的な健康ブームによる需要拡大や為替変動、現地の気候不順が重なると仕入れ原価が急騰し、500円〜600円前後の値頃感を維持しながら十分な利益を確保することが構造的に困難になります。
こうしたサプライチェーンおよび現場負荷の課題があるからこそ、モスバーガーは品質基準を妥協せず「期間限定」というコントロール可能な枠組み、あるいは客単価の高い「モスクラシック」での提供に限定していると考えられます。