日本ロック史を語る上で、群馬県を抜きにすることは不可能です。1980年代、伝説のロックバンド「BOØWY」を結成し、日本のビートロックの概念を根底から塗り替えた氷室京介布袋寅泰の2人は、いずれも高崎市の出身です。
布袋寅泰は自伝的手記の中で、からっ風が吹き荒れる高崎の河原でギターをかき鳴らし、東京への渇望と表現への衝動を募らせていた青春時代を克明に綴っています。過剰な装飾を削ぎ落とした鋭角的なビート感と、どこか哀愁を帯びたメロディラインは、冬の澄み切った冷気と乾燥した赤城おろしに育まれた、群馬ならではのサウンドスケープと言えます。また、藤岡市出身の櫻井敦司や今井寿らを擁したBUCK-TICKも、ダークかつ耽美な世界観で一時代を築き、その精神性は今なお国内外のアーティストに多大な影響を与えています。
この重厚なロックのDNAを21世紀に見事に継承したのが、スリーピースバンドのback number群馬県出身カルテットです。ボーカル・ギターの清水依与吏(太田市出身)を中心に伊勢崎市で結成された彼らは、地元のアマチュアバンドシーンで地道な活動を重ねて頭角を現しました。かつて清水が「付き合っていた女性を別のバンドマンに取られ、見返してやりたい一心で曲を書いた。その悔しさが原点」と赤裸々に語ったエピソードは有名ですが、地方都市特有の閉塞感や切実な日常の風景を極上のポップソングに昇華させる手腕は、まさに群馬の先人たちが切り拓いた王道の系譜です。