「ヒグマが出ない島なら、軽装で手軽にハイキングできる」と油断するのは致命的な誤解です。礼文島の自然は、熊とは異なる別次元の脅威を内包しています。
島内で最も警戒すべきリアルリスクの筆頭は、エキノコックス症です。礼文島全域に生息するキタキツネは、寄生虫であるエキノコックスを媒介している可能性が極めて高く、その虫卵は糞便を通じて沢水や野イチゴなどの植物に付着します。道中の沢水を直接口に含んだり、野生植物を生のまま口にすることは厳禁です。靴底や手袋に付着した泥にも留意し、下山後の手洗いや手指消毒の徹底が求められます。
もう一つの脅威が、日本海特有の突風と急激な気象変化です。礼文島は標高こそ低いものの、北緯45度以北に位置する過酷な気象環境にさらされています。本州の標高2,000メートル超級に匹敵する冷涼な風が吹き抜けるため、夏場であっても強風と濃霧に煽られると体感温度は急速に氷点下近くまで低下し、低体温症に陥る遭難事案が過去に発生しています。
ネット上のQ&AサイトやSNSでは、「熊がいないからスニーカーで十分」という短絡的な書き込みが見られますが、露出した岩場やぬかるんだ泥道、強風に耐えうる足元(トレッキングシューズ)と透湿防水性の高いレインウェアは絶対に省くことができません。