インターネット上の水不足報道で最も頻繁に見られる誤解は、「貯水率が〇%まで落ちたから、明日にも取水制限や断水が始まる」という単純な短絡です。水資源管理の構造を理解しないままパーセンテージの数字だけに反応することは、実態を見誤る最大の要因となります。
神奈川県の水インフラには、他県には見られない2つの強固な防御壁が存在します。
第1に、「相模川・酒匂川連系水運用」と呼ばれる巨大な導水管網です。相模川水系が逼迫した際には酒匂川水系から、逆に酒匂川水系のダムが減水した際には相模川水系(宮ヶ瀬ダム・相模ダム)から相互に原水を融通するバイパス機能が確立されています。現在、酒匂川水系の丹沢湖が貯水率30%台まで落ち込んでいても、相模川水系側からのバックアップが働くため、県西部や湘南地域への上水供給は維持されています。
第2に、「宮ヶ瀬ダムの圧倒的なキャパシティ」です。相模ダムの有効貯水量が約4,820万立方メートル、城山ダムが約5,120万立方メートルであるのに対し、宮ヶ瀬ダムは単独で約1億5,200万立方メートルという桁違いの容量を誇ります。宮ヶ瀬ダムの貯水率が1%回復することは、城山ダムの約3%分に相当します。したがって、城山ダムの貯水率が10%であっても、宮ヶ瀬ダムが80%を維持していれば、水系全体としての絶対水量は確保されている計算になります。
このため、神奈川県給水制限の可能性(各家庭への減圧給水や計画断水)が現時点で発動される蓋然性は極めて低く、ネット空間で囁かれる「近いうちに断水する」という言説は明白なデマであると結論づけられます。