1992年にスタートした「空耳アワー」において、採用者へ贈られるノベルティは階層化されていました。基本賞品である「タモリ倶楽部 手ぬぐい」、ワンランク上の評価を受けた際に進呈される「タモリ倶楽部 Tシャツ」(時期によっては特製耳かき等)、そしてタモリが腹を抱えて絶賛したときにのみ飛び出す最高賞「空耳アワー ジャンパー」です。
このジャンパーの獲得条件は、単に「英語が日本語に聞こえる」という技術的整合性だけでは絶対に到達できません。番組内で「ソラミミスト」として長年タモリの隣に座り続けたイラストレーターの安齋肇氏は、特番や過去の手記の中で選考のシビアさを度々振り返っています。安齋氏がどれほど興奮して推薦しても、タモリが「うーん、言われてみればそう聞こえるけど、バカバカしさが足りないね」と一蹴すれば手ぬぐい止まり。逆に、語感のハマり具合とミニドラマVTRのくだらなさが絶妙な化学反応を起こし、タモリのツボを直撃した瞬間にのみ「これは……ジャンパーあげましょう!」の鶴の一声が下されました。
推定されるジャンパー進呈率は、番組へ寄せられた年間数万通の投稿のうち、オンエアに至るわずか数パーセントの作品の、さらにその数パーセント。確率にして数千本から1万本に1本という天文学的な狭き門でした。タモリという希代の表現者が持つ独自の美学・審美眼に合格すること自体が、投稿者にとって生涯の誇りとなるステータスシンボルとして機能していたのです。