胎児の染色体異常リスクを推定する際、専門医は鼻骨の有無単独で判断を下すことは決してありません。必ず複合的に検証されるのが、首の後ろの超音波透亮像であるNT肥厚 ダウン症 鼻骨の相関関係です。
NT(Nuchal Translucency:後頭部透亮帯)は、妊娠11週〜13週の胎児の後頸部に一時的に生じるリンパ液の貯留を指します。NT肥厚が3.5mm以上など基準値を超えて厚い場合、21トリソミーをはじめとする染色体異常や心臓奇形のリスクが統計的に上昇します。
専門的な初期スクリーニングでは、これら複数の指標を組み合わせた「複合スクリーニング」が行われます。 例えば、以下のような胎児超音波所見を総合して統計学的リスクを算出します。
・鼻骨の欠損または低形成(鼻骨マーカー)
・NTの厚み(ミリ単位での厳密な測定)
・三尖弁逆流(心臓の弁からの血液逆流)の有無
・静脈管(心臓へ血液を送る血管)の血流波形の異常
・母体血清マーカー(PAPP-A、free β-hCGなど)の血清濃度
仮に鼻骨が綺麗に確認できていたとしても、NTが著しく肥厚している、あるいは静脈管血流に逆流波形が見られる場合、総合的なダウン症リスクは跳ね上がります。逆に、鼻骨が見えにくくても他の血流所見や母体年齢リスクが極めて低ければ、過度な心配は不要となるケースもあります。一つの所見のみを切り取って安心材料にしたり絶望したりするのではなく、総合的な確率論として捉える姿勢が不可欠です。