どれほど緻密な図面があっても、現場での施工精度が伴わなければ支保工は凶器に変わります。過去に起きた複数の重大労災事例を検証すると、支保工崩壊事故原因には明確な共通パターンが存在します。
都内の大規模基礎工事に携わるベテラン鳶職人は、取材に対して次のような生々しい実態を語っています。
「型枠支保工で最も恐ろしいのは、1本の支柱が座屈(折損)した瞬間、ドミノ倒しのように全体へ連鎖することです。図面上は完璧でも、床面の敷板が浮いていたり、水平つなぎの緊結クランプが1箇所緩んでいただけで、コンクリート打設の振動が加わった瞬間に荷重のバランスが崩れます。『生コンを入れたらパイプが弓なりにしなった』と気づいた時には、もう逃げる時間はありません」
事故原因の代表例として挙げられるのが以下の4点です。
- 根がらみ・水平つなぎの省略:支柱の有効座屈長が長くなり、設計耐力の半分以下でパイプが折れ曲がる現象。
- 偏心荷重と偏重打設:コンクリートを特定のエリアに山積みに打設したことで、局所的に設計許容荷重をオーバーするミス。
- 基礎地盤の沈下:支柱を支える地盤や敷板の養生が不十分で、打設重量によって脚元がめり込み、支柱が傾斜・脱落する事故。
- 切梁・腹起しの接合不良:土留め支保工において、火打ちや切梁の端部プレートのボルト本数不足や溶接不良による破損。
これらは技術的な問題にとどまらず、現場のタイトな工程設定や職人間のコミュニケーション不足が引き金を引くケースが後を絶ちません。