米に関する情報発信のなかには、「玄米は生きている種子だから、水気さえなければ何年でも腐らない」という極端な説が見受けられます。しかし、これは農家が適切な湿度・温度管理下で保管する「籾(もみ)付き米」の話と混同された危険な誤解です。
玄米は籾殻を取り除いた段階で、種子としての強固な保護壁を一部失っています。最大の盲点は、「ぬか層に約15〜20%もの脂質が含まれている」という事実です。白米は脂質を削ぎ落としているため「でんぷんの乾燥・パサつき」が劣化の主軸になりますが、玄米は脂質をたっぷり抱えているがゆえに、常温放置すると油が酸化して古油臭を放つという特有の劣化リスクを背負っています。
また、「古くなった玄米でも、コイン精米機で白米に削ればカビや臭いも消えて安全になる」という噂も誤りです。カビ毒(マイコトキシン)や深くまで進行した酸化は、ぬか層だけでなく胚乳部分まで浸透しているケースがあり、精米機を通しても毒素を完全除去することはできません。変質した米を精米機の共用スペースに投入することは、他の利用者の米へカビ胞子を拡散させる衛生上のマナー違反にもつながります。