椅子をなくした効果は、単に机の周りをすっきりさせるだけに留まりませんでした。最も劇的な変化をもたらしたのがキヤノン電子の立ち会議です。従来の日本企業で日常茶飯事だった「定例の1時間会議」を全廃し、立ったままで書類もプロジェクターも使わず、要件のみを即断即決するスタイルへ移行しました。これにより、1件あたりの会議時間は平均15分以内、簡単な打ち合わせであればわずか3分で終了するようになり、業務効率化が一気に加速しました。
さらに徹底されていたのが、オフィス内の移動スピードに対するアプローチです。廊下には時速5kmのペースを体感させるための白線マーカーが引かれ、キヤノン電子の歩行速度改革として注目を集めました。だらだらと歩くことを禁じ、早歩きを促すことで社内全体の緊張感を保ち、時間の浪費を極限まで排除したのです。
こうした一連の取り組みが結実し、キヤノン電子の立ち仕事の効果は財務諸表へダイレクトに表れました。赤字寸前だった経営状態から、製造業としては異例の経常利益率20%超を達成。椅子の撤去によって不要になった執務スペースを圧縮し、浮いたフロアを研究開発や別事業へ転用したことで、無借金経営の高収益体質へと生まれ変わったのです。立ち姿勢を維持することで集中力が高まり、キヤノン電子の生産性向上は国内屈指の成功モデルとして経済界に激震を与えました。