過酷な巡業を続けながらも、島倉千代子さんは歌手としての輝きを失いませんでした。1987年、作詞・中山大三郎、作曲・浜口庫之助による『人生いろいろ』がリリースされます。これまでの重厚な哀愁演歌とは一線を画すポップな曲調と、「死んでしまおうなんて 悩んだりしたわ」という自らの波乱万丈な歩みを投影した歌詞は、世代を超えて爆発的な共感を呼びました。
翌1988年には第30回日本レコード大賞最優秀歌唱賞を受賞し、ミリオンセラーを記録。島倉さんは見事に表舞台への返り咲きを果たしました。しかし、この大復活こそが、細木さんとの関係に決定的な亀裂を生む引き金となったのです。
経済的な息の根を吹き返したことで、島倉さんの中には「自分の意志で歌いたい」「一人の人間としての尊厳と自由を取り戻したい」という強い欲求が芽生えました。周囲のスタッフや関係者からも、細木さんによる過度なコントロールから離れて個人事務所を立ち上げ独立すべきだという助言が相次ぎ、両者のパワーバランスは崩壊へと向かっていきました。