ここ数年で決定的となったのが、脚のない「ステムレスグラス」の完全な市民権獲得だ。高級食器ブランドがこぞってラインナップを拡充し、今や星付きレストランのペアリングコースでも当たり前のようにタンブラー型グラスが登場する。
理由は極めて合理的だ。重心が低いため倒れにくく、破損率が劇的に低い。何より、客側に「どう持てば恥をかかないか」という余計な精神的負荷を与えない。テーブルの上に置かれた有機的なフォルムのガラス器を、手に馴染む角度で自然に持ち上げる。それだけでいい。
2026年のスマートダイニングが追求しているのは、敷居の高さではなく体験の純度だ。形式張ったステムへのこだわりは、ある種のノスタルジーへと後退しつつある。