舞台での圧倒的なダイナミズムとは対照的に、映画やテレビドラマにおける彼の演技は、極めて繊細で微細な「引き算の美学」に基づいている。カメラが寄る僅かな目の揺らぎ、吐息の混じり具合、言葉の合間に挟まれる静寂。そこに宿る圧倒的な感情のドラマに、視聴者は息をのむ。
近年彼が演じた役柄を見渡すと、一筋縄ではいかない癖のあるキャラクターや、内に鬱屈した闇を抱える人物が目立つ。単なる「いい人」「男前」の型にはまらず、人間の生々しい欲望や脆さをリアルに演じ分ける表現力は、監督たちからの評価を決定的なものにした。「映像における黒羽は、静けさの中に鋭利な刃物を隠している」とは、ある映画監督の評だ。