厚生労働省が公表する「賃金構造基本統計調査」や各種民間リサーチの最新データを紐解くと、正社員と契約社員(有期雇用労働者)の間には、月例給与だけでなく賞与や退職給付において圧倒的な開きが存在します。同じデスクで隣り合い、似たような業務をこなしていても、手取り額や年間収入で大きな差がつく背景には、日本の伝統的な賃金構造と法的な枠組みの設計が影響しています。
最大の要因は給与・ボーナスの格差です。正社員の賞与が会社の業績連動に加えて「基本給の数カ月分」として年間算定されるケースが主流であるのに対し、契約社員の場合は「年俸制で賞与なし」「決算賞与として寸志(数万円〜十数万円程度)の支給にとどまる」設計が少なくありません。月給単体では同等に見えても、年間ベースで計算すると150万円〜300万円以上の開きが生じることは日常茶飯事です。
さらに深刻なのが退職金の有無と支給条件です。正社員に対しては勤続年数に応じた退職金積立や確定拠出年金(企業型DC)を用意する企業が多い一方、有期契約を前提とする契約社員には退職金制度自体を適用外とする就業規則が一般的です。20代〜30代では可視化されにくいこの格差が、定年退職を迎える頃には2,000万円前後の資産格差として顕在化します。
「同一労働同一賃金ガイドライン」の運用が厳格化され、基本給や手当の不合理な格差を禁じる最高裁判決が相次いでいますが、職務内容や転勤の有無、人事異動の範囲(配置転換の可能性)が異なる場合、待遇差が法的に「合理的」と認められる余地が残されています。これが、根本的な格差が解消しきらない構造的要因です。