気象庁のアメダス観測データや過去の気象統計を詳細に分析すると、山口県内における美祢市の立ち位置は極めて特異です。県内の主要都市である下関市や宇部市が穏やかな瀬戸内海式気候の恩恵を受けるのに対し、美祢市は典型的な内陸性気候の様相を呈しています。夏は最高気温が連日35度を超える猛暑日を記録する一方で、冬場は氷点下まで冷え込み、時に日本海側からの寒気塊によって数cmから数十cm単位の積雪に見舞われることも珍しくありません。
過去の降水履歴を振り返ると、美祢市は厚狭川(あさがわ)流域を中心にたびたび激しい水害を経験してきました。梅雨末期の活発な前線帯や日本海低気圧が通過する際、カルスト台地の斜面が湿潤気流を強制的に持ち上げる「地形性降雨」が加わり、時間降水量が80ミリを超える猛烈な雨を観測した事例が複数記録されています。石灰岩地帯は雨水を地下へ素早く吸い込む透水性を持つものの、想定許容量を超えた降水は一気に地下水脈から溢れ出し、短時間で河川水位を跳ね上げる危険を孕んでいます。
以下の比較表は、美祢市と山口県内主要観光エリアにおける気象特性の違いを客観データと現場環境から整理したものです。
表の数値からも明らかなように、美祢市の年降水量は沿岸部と比較して10〜20%程度多く推移する傾向があります。特に梅雨時期や秋雨前線の停滞期には、南西からの湿った空気を受け止める天然の防波堤のような役割を山地が果たすため、沿岸部で「曇り」と予報されていても、美祢市内ではしっかりとした本降りの雨になるという格差が日常的に発生しています。