夏の野外でツクツクボウシの声を聞き分けるのは、一見易しそうに見えて奥が深い。アブラゼミの濁った連続音や、ミンミンゼミの規則的な繰り返しと比べ、ツクツクボウシは圧倒的にフレーズのバリエーションが豊かだ。特に「ウィーヨ」に移行する直前のわずかな間合いに着目すると、初心者でも一発で見分けがつく。
こうした音響データの蓄積と種ごとの識別技術においては、国立科学博物館や日本昆虫学会に所属する研究者たちの貢献が大きい。市民参加型の生息域調査やデジタル音響データベースの構築が進んだことで、地球温暖化に伴う北上現象や、都市部の微気候による鳴き声の出現時期のシフトなどが克明に記録されるようになっている。