王水の調整は極めてシンプルでありながら極めて危険だ。厳密な配合比率は、濃硝酸と濃塩酸を「1:3」の体積比で混合することによって完成する。硝酸が1に対して、塩酸が3。この比率が少しでも崩れると、金の溶解効率は劇的に低下する。
混合した瞬間、無色透明だった2つの液体は急速に不気味な黄橙色へと変色を始める。ここで起きている反応メカニズムこそが王水の真骨頂だ。濃硝酸(HNO₃)の強力な酸化力と、濃塩酸(HCl)から供給される塩素イオン(Cl⁻)が互いを補完し合い、強力な酸化剤である塩化ニトロシル(NOCl)と塩素ガス(Cl₂)を大量に発生させる。刺激臭を放つ煙が立ち上るこの瞬間こそ、あらゆる貴金属を噛み砕く準備が整った証なのだ。