ネット上の情報や一般的な観光ガイドにおいて頻繁に見落とされている事実が、ユネスコ世界遺産の指定範囲です。サグラダファミリア 未完 世界遺産というキャッチコピーから「建物全体が世界遺産」と認識されがちですが、ユネスコに登録されている「アントニ・ガウディの作品群」の対象は、ガウディ本人が直接指揮を執った「生誕のファサード」と「地下礼拝堂」の2カ所のみです。現在ハイテク技術で建てられている部分は、厳密には世界遺産の緩衝地帯および拡張候補に位置付けられています。
この巨大プロジェクトにおいて、日本人が果たした足跡は決定的な重みを持ちます。1978年に単身バルセロナへ渡り、石工としてキャリアをスタートさせた外尾悦郎 サグラダファミリア 彫刻主任は、生誕のファサードを彩る「東洋の天使像」や「ロザリオの門」、さらに果実を模した塔のピナクル(頂部装飾)を手がけました。外尾氏は著書やインタビューにおいて次のように語っています。
「ガウディが残した形をただ真似るのではない。ガウディがどこを見て、何に祈りを捧げていたのかという精神の視線を追体験することこそが、石に命を吹き込む唯一の道である」
デジタル技術による効率化が進む現代の現場にあって、手作業で石の対話を重んじる外尾氏の思想は、サグラダ・ファミリアが単なるハイテク構造物に堕するのを防ぐ魂の防波堤として現地でも絶大な敬意を集めています。