舌の表面を観察すると、無数の小さな突起が見られます。これらは「舌乳頭(ぜつにゅうとう)」と呼ばれ、主に4つの形状に分類されます。このうち味を感じるセンサーである「味蕾」を備えているのは以下の3種類です。
- 茸状乳頭(じじょうにゅうとう):舌の前方2/3(舌先や側縁)に多く散在するキノコ状の突起。赤く点状に見える。
- 有郭乳頭(ゆうかくにゅうとう):舌の奥(舌根部)に「ハの字」状に8〜12個ほど並ぶ大型の突起。周囲の溝に多数の味蕾が密集している。
- 葉状乳頭(ようじょうにゅうとう):舌の奥の両側縁にあるヒダ状の突起。ここにも豊富な味蕾が存在する。
- 糸状乳頭(しじょうにゅうとう):舌の表面全体を覆う最も数の多い突起。感覚神経はあるが味蕾は持たず、食べ物の触感や温度を感知する。
成人で約5,000〜7,000個あるとされる味蕾の内部には、数十個から百個ほどの「味細胞」がタマネギ状に束ねられています。食べ物が唾液に溶け、味物質となって味蕾の先端にある「味孔(みこう)」に入り込むと、味細胞の受容体と結合します。
苦味を感知する受容体群(T2Rファミリー)は、ヒトにおいて約25種類存在します。甘味やうま味を感知する受容体がわずか数種類であるのに対し、苦味受容体だけがこれほど多様なのは、自然界に存在する多種多様な植物毒や腐敗物を瞬時に識別するための進化の産物です。
舌の奥にある有郭乳頭には味蕾が極めて高密度で集積しているため、「飲み込む直前の最終関門」として毒物の苦味を強烈に察知し、誤嚥や嚥下を防ぐ反射(嘔吐反射)を誘発しやすくなっています。これが、「苦味は舌の奥で強く感じる」と体感的に刷り込まれた生理学的な理由です。